前回は、俗に言う「理解ある奥さん」「賢い奥さん」ほど、最後に切れて「熟年離婚」に至る可能性があると書きました。
ポイントは、夫がいそがしい現役生活まっさかりの時に、夫に迷惑をかけず、甘えてはいけない!と自らを律し、しかし人間は一人では孤独ですから、自分の身の回りに、夫が関与しない、いろんなコミュニティを作り上げてしまう…というものでした。
この前提をきっちり理解できた場合、前回かいた熟年離婚へのステップも、理解できると思います。
奥さんにあまえだす、仲良くしようと思う。
このこと自体は、実は何も悪いことではありません。
夫側から言うと、やっと家にいる時間もできてきたし、ここまで一緒にやってきた奥さんと、もう一度仲良くしよう!と思うこと自体は、とてもいいことだと思います。
せっかく時間の余裕ができたのに、ましてや早期退職や定年などで会社を離れたのに、結局日曜のたびに会社時代の仲間と「ゴルフ」「マージャン」というオジサンがたくさんいますが、個人的にはそれより「奥さんと仲良くしようと思う」人の方が、筆者素敵だと思います。
問題は、その先の行為です。
ベタベタしだす。そしてうっとうしがられる…のはなぜか。
ここで象徴的に書いた「ベタベタ」は2通りの意味があります。
ひとつは、肉体的にベタベタの意味。手をつないだり、ボディタッチしたり、まあキッスやセックスを求めたりとかも含め。
この場合、いままで、結婚以来ずっとそうしてたかどうか?が大きな分かれ目です。新婚時代の行ってらっしゃいチューや、たまのお出かけデートなどで、手をつないだり、を、忙しい現役時代もかかさず、ずっと続けていた場合、なんの問題も起こりません。
あと結婚以来、浮気をしていない、ということも「ベタベタ、セーフ」の条件になります。
浮気がばれた、という場合、その後妻と人間関係は回復しても「不潔・不浄」と妻側にインプットされた場合、基本、その肉体的距離感は永遠に続く場合もあります。
これは結局妻側のメンタルの問題と関連します。
ま、男の方からするとわかりにくいでしょうが、だめなもんはだめと考える最後の世代が、今の50代オーバーなのかもしれません(40代以下の場合そういう性的意識をもつ女性は、希少でしょう)。
そして、上に書いたような「継続的ベタベタ」を、結婚後継続してこなかった夫側が、急に「若い時みたいに」と勇気を出してアプローチした場合、妻側は次の段階=うっとおしい、の反応になります。
考えてみましょう。年齢的にもう相当な大人です。しかもそれまでのようにずっと継続して、手をつないで過ごしてきたわけではないですから、彼女側は圧倒的に恥ずかしいし、また「いまさら」感が強いのです。
夫の知らない仲間にも、きっとそういうことも話題になっているのです。それがとつぜん「お手手つないで」というのは、要は「みっともない!」という意識が働いて当たり前なのです。
「ベタベタ」のもう一つの意味は「精神的・時間的」なものです。つまり、自分の暇に合わせて、妻と時間を作ろうとする…というパターンです。
簡単なモノでいえば
「散歩でも一緒に行かない?」
「このテレビ一緒に見ようや」
「ふたりで共通の趣味を持つために、英会話でもならいに行こ」
「夫婦50割引あるから映画行こう」
「週末温泉行かんか」…などなど。
ここだけ読むと「なんと優しい夫や!」「なにがあかんのや!」と、男性読者はきっと思っていることでしょう。
しかし、前提で書いたように、妻には妻のコミュニティが完成していて、そのための時間が必要なのです。
「あんたねえ、急にそんなこといわれても、こっちにはこっちの事情、段取りちゅうもんがありまんのや!」が、妻側の基本的な言い分なのです。
さらに、もうひとつのここでの過ちは、すべて「自分(夫側)の都合、嗜好での提案」ということです。
人間は一人ずつ違います。妻には妻の嗜好があります。仮に、ともに映画好きだとしても、夫がアクションの洋画好き。妻は韓国メロドラマ好きでは、合うはずがありません。夫婦50割引きで、無理に行くより、レディス・デーで勝手に行く方が妻側は「ありがとさん」なのです。
妻には妻の好みというものがあります。しかも、50代ともなるとその辺の嗜好は完成の域にあり、いまさら若いときのように、新しいことになんでもチャレンジ!みたいな「感度の柔らかさ」は男女ともお互いに期待する方が難しい。
読者のみなさん、それぞれに自らを振り返ってください。昔に比べて、新しいこと、知らないことをやってみようという気が薄いでしょ?私はこれが楽しい!これが好き!に頑固になっているでしょ?別にそれでいいのです。ずっと好きだったことをみつけて、ながいこと続けているのだから、それについての経験や知識も豊富になって、ますます深く掘り下げたい!が定向進化の自然な形なのです。
すこし話がそれましたが、結局、夫側の思いは、そこまで一緒に頑張ってきて、耐えてきた(甘えたかった時代に甘えず我慢して、がんばってきた)妻にも、当然わかっているのです。でもそこで「自分勝手なアイデアだしてくるか?」「私にどうしてほしいかを聞かんか?」に対して、妻側は「うっとうしい」を感じるのです。
とくに、夫が何とか私と仲良くしよう!という気持ちからの提案であることを、わかっているからこそ、ストレートにNOといいにくい。したがって、余計に「うっとうしい」のです。
さて夫と妻とのズレについての解説は、これでほぼお分かりいただけましたでしょうか?
ここに気づかず、夫側が「なんでや!と怒る」の次のステップに進むと、熟年離婚のステップはほぼゴール目前になってしまいます。
そうならないために!
一番お互いの人生を共有してきた人と、これからもハッピーであるためには!
映画「後妻業の女」で、豊川悦司演じるブライダルコンサルタントとは大違いの、真剣でまじめな解消方法とその道筋を、次回ご説明します。
2016.09.08 堀埜