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おじさんは、なぜキレる?

おじさんVS若者…どっちが「キレる」?

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著作者:Chrystian Guy

 

 

最近の若者はよく「キレる」と言われます。

実は私も先日、横断歩道を渡ろうとすると、横から赤信号を無視して、『スマホ見・イヤホン耳の自転車若者』とぶつかりそうになり、ひゃ!とステップバックした瞬間、なんじゃおまえ!と逆切れされ、「?」となっているうちに、その若者に自転車で立ち去られました。

いまだ鋭い観察力を誇る映画監督:高橋伴明さんの「紅い玉」という作品でも、ナンパを嫌がる女子高生をみて、止めにはいった中年大学教授に、一挙にきれてくる若者が描かれています(映画では、その中年が意外に強く、逆に若者がぼこぼこにされてしまいます)。

一方、ネットなどでは逆に、若者より「おっちゃんたちがよくキレる!」と騒がれています。

駅で、コンビニで、酒場で…。たしかに「いやいや、そこまで急に怒らんでも」とか「何をいつまでも…」とか、そういった中高年男性の暴走状況はよく見かけます。

一昔前、「暴走老人」という言葉が流行しましたが、今は「暴走中高年」という状態になっているようなのです。

今年3月には「中高年がキレる理由  /榎本 博明 (著) 」(平凡社新書)が出版され、ベストセラーにもなっているほどです。

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もちろん、私自身もキレるおじさんに、大迷惑という経験は度々あります。みなさんもきっとおありなのではないでしょうか?

さて、ではおじさんと若者、はたしてどちらがキレやすいのでしょうか?

これに対するジャストな調査は(出所不明のネット記事はともかく)今のところないようですが、参考になるのは2016年度に一般社団法人日本民営鉄道協会ほかJR各社、大阪市交通局など17社がおこなった「鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について」という調査の中の「加害者年齢」の項目をグラフ化したもです。

2014年度は下記のような結果になっています。

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これを見てもわかるように40代以上が明らかに20~30代よりも問題行動を起こしているということ。しかも驚くべきは60代が各世代間でダントツに多いということです。

調査結果の中には、2012~2013のデータもありますが、それをみても、世代間の状況はかわらず、常に60代がダントツです。

どうやら「おじさんの方がキレる」は正しいようです。

 

なぜ、おじさんはキレる?

キレるというのは「怒りの状態」なのですが、特徴は、相手側の言葉や態度に対して「怒る」、つまり、被害者側にもそれなりの「理由」が推察できるのではなく、「いきなり」「理由不明」で「一挙に」暴発するのが特徴といえます。

「わけがわからんで怒ってる」というのが、通常の「怒り」と違う点です。

このこと結構ポイントですから、頭にいれておいてくださいね。

 ではなぜおじさんたちはキレちゃうのでしょうか?

先日asita.baで触れた記事にも書いたように、科学的な理由として「セロトニン不足」があげられるようです。

 

セロトニンに対しての記事はこちらをお読みください。  

 

年代的に管理職であることが多いこの世代は、私の実感としても「太陽」の下で過ごすことが減っています。また食生活も一般的には淡白なものを好みがちで、体内でセロトニンを生み出すうえで有効な「モツ類、貝類、赤み魚+炭水化物」という組み合わせは、減少気味といえます。

ですが問題はそれだけではないといえます。

ここでこの章の冒頭を読み直していただきたいのです。

要するに「こちらに落ち度がなくて怒る」というのは一体何か?

それはキレてる本人自身のなかに、真の理由があって、怒ってる理由自体は、単なるトリガー(引き金)でしかないということなのです。

たとえば、キレる瞬間は、だいたいこんな感じですよね。

普段は、まったく通じている冗談範囲のからかい、たとえば「相変わらず、ダジャレおもろないなあ」みたいな一言で、突然「おもろないってなんや!おまえおもろいんか!おまえ、自分のことおもろいおもてんのか?!」こんな感じで、こちらへの攻撃が始まって、それが延々続くわけです。

  • おもろないのはお前や!
  • だいたいおもろい、おもろないきめるだけのセンスあるんか。
  • 態度でかい思ってた。
  • ○○さんも××といってた。

…などなど、延々続きます。なんの話かわからないほどあれこれ出てきます。

「ごめん。おもろないは言い過ぎた」と仕方なく謝っても「言い過ぎって、なんや」「普段から言いすぎや」と今度は、言葉尻、をとって別の怒りに進化します。

つまり、なにをどういっても、ダメで、きっかけになったことを謝ったところで、解決しないのです。

 

おじさんがキレる原因~それはストレス・マグマの蓄積

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では一体なぜこんなことになるのでしょうか?

最初に書いたようにキレているのはこちらのせいではなく、キレてる本人の内部に問題があるからです。それは一言で言うと「不安」「自信喪失」=心理的ストレスなのです。その心理的ストレスは、中高年を取り巻く環境と大きなつながりがあると思われます。

まずは最も男性にありがちな仕事上の問題です。

この20年、中高年をとりまく仕事の環境は大きく変わりました。企業は短期的な利益を求めるようになり、管理職である中高年にそのプレッシャーを絶え間なく与えます。

一方で、職業スキルの部分では、ワープロやファックスでさえ、キャリアの途中で登場したという50代は、デバイスやソフトがどんどん変わる今、若い社員に指導しようにも、彼らの職業スキルにマッチしたアドバイスを与えることはなかなか困難な状況になっています。IT環境に限らず、入札が当たり前の商習慣への変化、国際競争にともなう英語スキルや効率化と原価低減要求など、過去学んできたこと以外に必要な知識やスキルが、ものすごいスピードで求められては変化する時代に、多くの中高年サラリーマンの若かりし頃に学んだ技能はストレートに役立たない時代になっているのです。

実務の向上に直結のアドバイスが難しいと、どうしても「かつての成功談」「成功方式」を語りがちになるのですが、先ほど書いたように時代の激変で、基本的にそれは「古い」「時代に合ってない」というふうに部下にとられがちです。

このように会社からの責任と指導能力のバランスが取れない結果、中高年は仕事上自信を持ちづらく、リストラを常に意識せざるを得なくなります。

プライベートでも同様の状況があります。

性的能力の衰え。流行の話題がずれすぎて、年下とうまく交流できない。ゴルフのスコアが下がりだす、などなど、あらゆる局面で「老い」を意識せざるを得ないのが、50代からです。

夫婦関係も変化してきます。子育てが一段落し、再び奥様との一対一の関係に向き合わなくてはいけません。奥様もようやく努力を重ねた過去から解放され、夫へのさまざまな要求が出てくる年代で、このことへの対処も必要になってきます。本来最も相談相手であるべき奥様に対し、再雇用の難しいこの年代は、奥様へ不安を与えないために、素直に不安や疲れを訴えにくいという状況になりがちで、ここでもストレスをためこみやすいわけです。

30代40代には、それなりに公私ともに活躍し、ちやほやされた人ほど、プライドが高くなりますから、そういった「能力欠如」「衰え」を口外し甘えることができません。

なので、自分を保つには、意地でも自分がまだまだイケてるポーズをとり続けるのです

が、本当は自分で自分の限界が見えていますから、下のものや外部から、本当は馬鹿にされているのではないか、などの被害妄想にも陥りやすいのです。

 

結論的に、キレた瞬間のトリガー(引き金)になった言葉や態度は、実は本質的な原因ではなく、相手の中でたまりにたまったストレス・マグマが原因なのです。

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キレるタイプ~温和な人ほどキレやすい。

こういった日常的なストレスがたまりにたまっている状況があるのは、みんな同様なのですが、ここでキレやすい人を観察していると、普段温和で笑顔の方に多いという傾向があるということに気づきませんか。

つまり、これらの人は、前の章で書いたストレス要因を「我慢し」「ため込んでいる」ので、ストレス・マグマがたまっている状況にあると言えるのです。

逆に、普段から自己主張がはっきりしていたり、小さな文句、ちょっとした怒りをわりと単純に表現している人がいます。世間的には子ども、といわれるタイプですが、このタイプは意外にキレることが少ないと思いませんか?

同じようなストレス要因を持っていても、日常的に小さく発散しているので、大爆発が起こるほどストレス・マグマがたまっていないのでしょう。

 

キレられた時の対処法

キレる原因が、相手のストレス・マグマにあることを理解できたら、何をいっても関係なく怒り続ける状態が納得できますよね。そして、キレられた場合、こちらにできることはなく、火山の爆発と同様、マグマが一定量噴出するのを待つしかない、ということもお分かりいただけるでしょう。

では実際にキレられた時、被害者はどういった態度をとるのが一番ダメージが少なく済むのか?

ここまでの話で、結局原因は「こちら側」ではなく「向こう側・相手側の心の中」にあることが分かったと思います。

なので仮にトリガー(引き金)になった、言葉や態度について謝っても、それは火に油を注ぎこそすれ、沈静化することにはつながらないのです。

ではどうすべきか。

方法は二つです。

ひとつめは相手以上に怒ること。

冗談で書いているのではありません。キレやすい人は前に書いたように「もともと温厚・笑顔の人」、つまりは常識人なのです。したがって、こちらが相手側の怒りのパワーを上回るようなエネルギーを出すと、それに気づき、その場を収めようとする方向に、本来の常識が働き出す可能性があります。

か、この場合、大ゲンカになる可能性も否定できませんから、そのリスク覚悟で対処すべきでしょう。

二つ目。
完全に無視する。できればすぐにその場を立ち去ることです。

何をいっても通じる状態ではありません。したがって同じ時間と場を共有すること自体が無意味なのです。

では帰りましょう。

決して不愉快な気持ちは消えませんが、対処する面倒くささや、それに伴うこちら側の怒りの上昇などを考えたとき、さっさと退却が一番いい対処法でしょう。

 

キレられやすい相手

最後に、キレられやすい相手はどんな相手か?にも触れておきます。

それは基本的に原因側にとって「ハードルが低い」「甘えやすい」人の場合が多いのです。

キレられて、実は甘えられている…なんと虫のいい迷惑な話と思うかもしれませんが、たとえばその原因側のおじさんにとって、奥さん、年下の友人、兄弟など、相手の側が自分にとっては普段ストレスの対象でない人が、実は爆発の対象になりやすいのです。甘えやすい人は心理的な壁が低く、したがってマグマも流れやすい…このようにイメージするとわかりますよね。

したがって、仲良しなほどキレられやすくなります。であれば、結果的にやはりさっさと相手にしない!無視してたちさる。

これが一番正解だとおもいますよ。

 

 

文責:堀埜正直

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