おとなの「遊ぶ・学ぶ・つながる」を提供するWEBマガジン

地震に備えるために学ぶ~耐震診断ってなに?~

日本列島は地震の活動期に入った!

日本列島は地震の活動期に入った…という言葉をよく聞く。実際阪神淡路大震災以降、数年に一度単位で大きな地震に見舞われている。下記のリンク先の表をご覧いただきたい(pdfがダウンロードされます)。

日本の近世以降の地震

この表は2011年の内閣府中央防災会議の資料だが、これを見ても近世以降、数年に一度単位での大きな地震が列島のどこかで起こっていることが分かる。
私たちはどうしても地震災害のニュースをマスコミから知る。この場合都市部災害や死者数が大きいものはニュースになり印象に残りやすいが、この表をみると、『自分の記憶』以上の地震が頻繁に発生しているのが分かる。
また今後数十年以内に東海南海トラフ地震が発生する可能性があるなどとも一部報道があり、不安は増すばかりだ。

阪神淡路大震災での多くの犠牲は木造家屋の倒壊(全壊半壊合せて122,566棟)、それによる火災炎上や圧迫致死であった。

8667caf7301fa6a29882ebfde60b5535_m

以上のことを考えたとき、まずは少しでも自分の家が安全であること、地震に強い家であってほしいと願うだろう。倒壊してしまって下敷きにというリスクは少しでも避けたい。

そこで「耐震」という考え方が現実的になってくる。

必要耐震壁量を厳しく言い出したのは阪神淡路大震災以後からで、それまでは建築基準法でただ一行「つりあいよく配置すべきものとする」の文言のみで、設計者・施工業者の<性善説>に期待していただけであった。しかも現在においても木造二階建ての家屋に関しては建築基準法第6条1項四号(いわゆる四号特例)にて建築確認申請時にも図面や構造計算の添付を必要とされていないのが現状である。

当然のことながら、利益優先で動く業者の場合、基準法以上の事は期待できない。残念ながら、この国の法律では、まだまだ建築に関しては自己責任という考え方が主流なのだ。

耐震診断の必要性

1981年6月に建築基準法施工令の大改正が行われ、構造基準についても「新耐震設計基準」が誕生した。現在、一般的に耐震化の要・不要の判断は、建設時期がこの81年以前か以後かが大きな基準となっている。

まち

おおざっぱに言えば、築35年以上経つ建物は耐震化が必要な建物である。まして木造2階建ての住宅は先にふれたように建築確認申請に関わらないので築年度にかかわらず耐震力は望めない。3階建ての木造建物も1981年以前の建築であればやはり注意を要する。

そこで今住んでいる住宅は安全なのか?をしり、その対策を施すための第一歩として、耐震診断が必要になる。
木造住宅の耐震化については、2000年の建築基準法改正時に基礎や壁や屋根に関して細分化し、数値で耐震指数が規定された。建築物の構造強度を示す「上部構造評点」と言う診断数値である。簡単に言えば安全ランクである。

耐震診断した建物の「上部構造評点」が
1.5以上であれば⇒倒壊しない
1.0以上1.5未満⇒一応倒壊しない
0.7以上1.0未満⇒倒壊する可能性がある
0.7未満⇒倒壊する可能性が高い
と、ランク付けされている。
その建物の「上部構造評点」を割り出す為に、耐震診断を行うのである。
マンションなど、木造以外の建物(Is数値:構造耐震指標)であっても考え方は同じである。

耐震診断は特殊な技量が必要となるので、補助金を受けて(次回詳細説明)耐震診断を行う場合は、定められた有資格者(建築士かつ指定講習受講者等)の診断証明が必要になる。
診断方法は、ただ机上の図面で判断するのではなく、建物から生の声を聞く。
床下に潜り基礎の状態を確認し、小屋裏に上がり梁や筋交いの状況を確認する。古い建物になれば確認申請書や図面自体が損失している場合が大半である。調査した上で図面を作成して、立地条件・基礎・外壁内壁・屋根の使用材料・現状の風化具合から割出し数値化して「上部構造評点」を算出するのである。
耐震診断を私は「建物カルテを作成するのです。」と依頼主に説明する。
耐震診断を行うことで、現実の状態を把握して…
1)耐震工事を行い財産価値を高めるのか
2)耐震より解体して建直し、または引越しなどをおこなうべきか、
を決める基準としていただけるのである。

(次回は耐震診断・耐震改修設計・耐震改修工事に関しての補助金制度を説明する。)

 

取材・文 中村泉(Wise一級建築士事務所)
構成 堀埜正直(asita.ba)